時代的背景と創業
中国醸造は、1918年に設立されました。当初は、清酒を造る際に必要な醸造用アルコールを酒処の広島県を中心に供給するメーカーとしいう立居地でした。
そのような中で、甲類焼酎であるダルマ焼酎を発売し、一般消費者に向けても販売を進めていきました。
中国醸造が酒つくりを始めたのは、1963年のことになります。当時の経営者である二代目社長の白井修一郎の指揮の下、清酒の製造が始まりました。現在の中国醸造にも受け継がれている考え方「進取の精神」に則り、修一郎は新しいことに果敢に挑戦していきました。「他と同じことをしていては駄目だ」という思いの中で、まず挑戦したのが「四季醸造蔵」です。現在の酒蔵には、一部の大手メーカーに四季醸造蔵を持っているメーカーはありますが、当時の状況を考えれば、大きな挑戦であったと思います。一年を通して酒をつくり続けることができ、高品質の酒質を提供できるということで、「清酒一代」は広く消費者に愛されました。
中国醸造 「はこさけ一代」の開発
次に修一郎が取り組んだのが、遮光性をもった容器の開発でした。「はこさけ一代」は、この時ドイツのツーパック社との共同開発によって生まれた商品です。日本で牛乳パックが使われ始めたのが1961年以降のことなので、業界に先駆けて紙容器の清酒を1967年に発売しました。四季醸造蔵によって常に高品質の酒質を提供しつつ、はこさけ(紙容器)の遮光性で、品質を損なうことなく消費者にお届けできる「はこさけ」は、瞬く間に全国をカバーする商品になっていきました。
更に、「はこさけ一代」はリニューアルの度に進化していきました。1977年、紙容器の内面にアルミ箔を貼り込み、酒を流しながら充填するテトラパックの導入で、空気の入らない満量充填が行えるようになりました。これにより、遮光性、機密性に優れた商品が誕生しました。新しい「はこさけ一代」は、容器が丈夫で、かつ清酒の劣化を防ぎ、より美味しい状態で酒を楽しんでもらえる商品となったのです。「はこさけ一代」の開発におけるこの一連の常に良い物を消費者にお届けする為に挑戦し続けていく姿勢は、現在の中国醸造の基本的な考え方にも大きく影響を与えています。
「はこさけ」に込められた開発の原点
今日、私たち社員一同が、常に進取の精神で事にあたるという姿勢はこの「はこさけ一代」を作り上げたパイオニア精神にあるのです。
「はこさけ」という商品を生み出すコンセプトは、
①光により劣化する清酒の弱点を防ぐ容器の開発
②瓶と違い、比較的に簡単に容器を処分できる
③小容量で持ち運びに適している
ということだったようです。特に、清酒は光によって劣化していくので、遮光性に高い紙容器は非常に優れた容器であると言えます。「はこさけ」は現在も中国醸造の看板商品です。
当社は、清酒の造りを行っている蔵の中では、比較的に歴史の浅い蔵です。1963年の開始なので、およそ50年程度しか歴史はありません。その中で、創業数百年になる老舗と、どういった形で差別化した商品を生み出していくか。そこで、当社の出した答えのひとつが、品質劣化(酸化)を極力抑えて美味しさを長く維持する商品の導入でした。
こういった、コンセプトで造られた「はこさけ一代」は南極観測船にも持ち込まれ、航海士と共に長い船旅の友になったという記録も残っています。こういった汎用性の広さも紙容器入りの清酒のメリットです。
近年、中国醸造の造る「はこさけ一代」も岐路に立たされています。商品メリットは、その価格面の魅力です。紙容器のお酒=低価格商品という構図が当たり前の市場状況となっているのが今日の状況です。
そもそも紙容器入りの清酒を開発した本来の目的は、酒質(クオリティー)の維持ではなかったでしょうか。決して、紙容器のお酒が低価格帯の商品ではないのです。
そうした、消費者イメージを払拭し、酒本来の美味しさを消費者に伝えていくことが、中国醸造が今後挑戦していくべき課題なのだと思います。
はこさけ
はこさけ2
(執筆者:木村吉宏、中国醸造株式会社)